連載4回目です。
今までの記事はこちら。
順番に読んでくださいな。↓
【第1回】 【第2回】 【第3回】
◆プロということ◆
もうひとつとっても重要なことを言わなくてはなりません。
というか、もしかしたら今までの話よりもこれがいっちばん重要。
お説教っぽいお話はこのトピックでたぶん最後になると思います。
プロになるんだという夢を語るときに、あなたが想像する景色はなんですか?
大きなステージでたくさんの観客の前で華々しく歌う自分。感動しました!とファンにかこまれてプレゼントや手紙をもらう自分。たくさんのオファーが引きも切らない自分。
どう?
全部、「ステキな自分」の想像をしてるでしょ?
そういう幻想は最初の大きな原動力だよね。そういうの本当に大事。
ちやほやされたい、目立ちたい、お金が欲しい、異性にモテたい。
そういう欲求はモチベーションそのものなので、強く強く持ち続けてね。
だけどね、その幻想はあなた自身を楽しませてはくれるけど、それだけのことだよ。
「歌手」「ミュージシャン」「舞台俳優」という言葉のキラキラ感であなたが満足したらもうそれで終わりですよ。
良く考えて。
あなたの価値を決めるのはあなたじゃない、お客さんです。
お客さんがお金を出す価値があると思えばチケットやCDを買ってくれます。
もしくは演出家やプロデューサーがあなたの出演を決め、ギャラを出してくれます。
仕事である以上、それが全てです。
あなたの夢や幻想は関係ない。
あなたを買ってくれるお客様や制作スタッフの存在の有無をリアルに想像したことある?
誰かがあなたをちやほやしてくれるんじゃない、あなたが誰かを歌で喜ばせるんです。
だからそこに対価としてお金が支払われる。
喜ばせる方向を逆に想像をしてはいませんでしたか?
たとえば。
ごはんを外に食べにいくとき、あなたはどうやってお店を選びますか?
まずい食事が出る店にはわざわざ行かないでしょ。おいしいお店から選ぶよね。
さらに付加価値があればもっと行きたくなる。
ぴかぴかに手入れされた素敵な食器を使っている店。インテリアの趣味が良く、広々とした空間のある店。接客がよくてリラックスできる店。お手洗いが清潔で掃除の行き届いた店。これでちょっと安かったりしたら最高。
それらを全部総合して「お金払ってでも行きたい店」にしか人はお金を出さない。
あなたも私もね。
だからまともなお店はみんなそうなるように努力してる。しないと店がつぶれるから。
家庭の普通のお母さんが家にあるパナソニックかなんかの電子レンジで作るスイーツと、デパートに並ぶパティシエのケーキって次元が全然違うと思わない?
お母さんのスイーツは家族にとっては最高に幸せの味だけど、デパートで1個700円で売れると思う?
つまり、そのお金払ってまで買う人がいると思う?
アマとプロの違いっていうのはそういうこと。
そしてこの世にケーキ屋さんは無数にある。
なんとかプロとして店を出すまでこぎつけても、お客さんは隣の店で買っちゃうかもしれないよね。
ひとは1日に何個もケーキを食べたり毎日食べたりしないんだよ。 (←私はするが。)
世界中で売れるケーキの数はだいたい決まってて、その中のいくつを自分の店で買ってもらえるのかなって話。
たくさん買ってもらうためには隣の店よりも美味しくて美しいケーキをショーケースに並べない限り、勝ち目はないよね。店をつぶさないためには毎日毎日おいしいケーキを作る方法と、それを道行くひとに知ってもらう方法を考え続けて作り続けるしかないんだよね。
歌も同じ。
お金を出してまで聞きたい歌じゃなきゃ、それは商品にならない。
彼氏が自分に歌ってくれる心のこもったラブソングはとても嬉しいけど、アカの他人には耳障り。むしろキモいんですけどってな話よね。
歌手になるっていうのは、値段がつけられるようなハイレベルな歌を、見知らぬ他人が買ってくれるってこと。これってすごいことだと思わない?
急に歌手になりたいと思いついたあなたの歌は、今の時点ではたぶんお母さんの手作りプリン以下。ここからパティシエになるための修行は厳しいよ。
いきなり自由が丘に自分の店をオープンした状態を想像してニヤニヤしてもなんの意味もない。
そこに至るために何を勉強するべきか、どうやったら自分の歌を選んで、お金を出して買ってくれる人がいるような価値をつけていくか、それを真剣に研究しつづけるしか道はないよ。
時給800円で働く若い子がいたとして、そんな子があなたのライブの4000円のチケットを買うってどういうことか、もう簡単にわかるよね?
「自分のライブのために5時間働けよ」って言ってるってことだよ。
「ライブの日のスケジュール空けとけよ、あと交通費もかかるからな」も足しといて。
そういう図々しいことを平気で言うのが歌手という仕事です。
そう言えるだけの価値が自分にあると信じられるからライブをやるんだよ。
こんなもんでいいかな、と自分自身に妥協してしまいたくなったら考えてみて。
この歌に金を出す客が本当にいる?って。
いねぇわって思ったら、もうちょっと頑張る気になるかもよ。
それに向き合うのはつらいことだけどね。
でも誤解しちゃいけないよ。客の奴隷になれって言ってるんじゃないよ。
売れるために好きでもない歌を歌っても、売れるわけない。
自分が信じる自分の歌を、お金出してもらえるレベルまで引き上げろってこと。
わっかるっかな~?
今日は短めにここまで。
ああ、書く書く詐欺になりつつある。
次回こそ本当に具体的な勉強方法を書きます。絶対。