娘を実験台にした3歳児の音楽教育記録まとめ・第二回目です。
前回の記事はこちら。
第二回目の今回は音楽の初期教育においてはピアノを弾くことよりも、もしかしたらずっと大事な「基礎練習」について書いていきます。
現在、瑛海は週3~4回のペースで1時間ずつの練習をこなしています。
ピアノを弾く練習はそのうち15分くらいであとの45分は基礎練習ばかりです。
ですので、ピアノ自体の向上はゆっくりペースですが、その代わりプロの私でも驚くほどの音楽への理解が深まっていることを日々感じています。
常々わたしは思っていましたが、音楽は本当に「言語」そのものです。。
日本語に文法と文字があるように、音楽にもルールと楽譜があります。
猛烈な勢いで勝手に言語を習得していく時期の3歳児が、同時に音楽のルールを学ぶのはとても効率的だということが目の前の例(娘)で証明されつつあるのを認めざるをえません。
今回と次回の記事は、子どもに音楽教育をしたい親だけではなく、これから歌を勉強したい若者にも読んでほしいです。ぜひ拡散を。
あ、別に若者じゃなくても読んでほしいです。w
では、実際の練習方法公開していきます。
◆読譜練習◆
歌の場合なんかは聞いて覚える方法でも普通に歌えるし、譜面読めなくてもプロとしてやっている人もけっこういるけど、ピアノはまず無理かと思います。
盲目のピアニストもいなくはないけども、そういう方は特殊な耳を幼少期からの厳しい訓練で育てているのです。でも、どう考えても普通は楽譜読めるようにした方がよっぽどラク。
とはいえ、言語における文字よりも、音楽における楽譜は一瞬で読んで分析すべき情報量がとても多くて習得には時間がかかります。
最大で10本の指を使うわけで、10個の音符を同時に読めなければなりません。(+ペダルで足も使うしね。)今弾いているところだけじゃなく、2小節くらい先まで読めてないとスラスラとは弾けません。
そういう意味でも読譜の能力は幼少期から繰り返し繰り返し訓練するべき最も大切な項目です。
いくら義務教育での音楽の時間が減らされたと言っても、ほとんどの人は楽譜のしくみの大まかなところは知ってますよね?
5本の線があり、その上に置いたマルの位置で音の高さが決まります。
右手はト音記号、左手はへ音記号で表記され、音の高さが約1オクターブ違います。
そしてマルの中が黒いか白いかと、マルから出た棒の形で音の長さが決まります。
こう書くと単純で覚えやすそうですが、これが組み合わさってさらに♭や♯がついたりすると無限の種類の音符があるわけです。
音楽は時間とともに進むわけですからゆっくり考えながら読んでては間に合いません。
何が書かれているか頭で考えずに、見た瞬間に音が浮かぶようにならないと「楽譜が読める」とは言えません。
ひらがなに例えると、「め」と「ぬ」は似た文字ですが、右がくるんとなっているどうかを確認して、”くるんとなっているから「ぬ」だな”とは思わないですよね。
このふたつの文字が似ているなんてことは意識せずに読んでいるはずです。
同じように楽譜はどれも全部似ていますが、五線の数を数えずに読めなくてはなりません。えっと下から2番目の線の上だからソだな、ではダメなのです。
ファとソが全く違う文字に見えるまで練習が必要です。
日本語の文字を覚えるのに、お風呂にポスターを貼ったりカード式教材を使うママはたくさんいますよね。
うちもそれでひらがな・カタカナ・アルファベットを覚えました。
話は音楽から逸れますが、これらの教材超お勧めよ。
コレ見てうちの子も勝手に覚えて読めるようになったから持ってないママは買うべし。
あおむしのカード、かわいくて最高。
ほとんどムスメには触らせずに手を伸ばして私がめくって読ませてる。w
実は音符にも同じようなものがあるんです。
このカードはあーちゃん(瑛海祖母でピアノの先生)いわく、今回の連載記事で紹介する教材の中で最もおすすめのものだそうです。
トランプ状のカードに音程と長さの異なる音符が書かれています。 ←パッケージ参照
裏にはかわいいイラストで「ド」とか「レ」とか書かれていますが、我が家では裏面はほとんど使ってません。(なぜならこのカードを使い始めた時点でまだひらがながよめなかったから。)
これをシャッフルしてから1枚ずつ出してゲームのようにして音を覚えます。
(最初はト音記号とヘ音記号は分けて別々のゲームにすべし。じゃないと混乱して大変。)
絶対音感をつけるためにも、カードを出したら必ずその音を鍵盤で弾いてさらに口で歌わせるのがコツ。
この反応速度をどんどん早くするために毎日必ず繰り返し練習。
とにかく文字と同様、読んだ「量」の蓄積が命。
この音は読めるようになったからいいかではなく、読めるからこそ「早く正確に」を目指します。
ヘ音記号の音符を読んで弾く練習。
木村 聡子さんの投稿 2016年3月30日
どう?驚きでしょう?
視覚から情報を読み取った上で口に出すという能力は、3歳児だと個人差がかなりあると思います。
しかしいずれはみんなひらがなが読めるようになるわけです。
譜面も同じ。練習すれば必ず読めるようになります。焦らずコツコツやってください。
カードとは別にもうひとつ。
イラストボードを使ってこんな五線譜を手作り。
幅2.5cmに線を引いて、ト音記号を書きます。五線の上下に同じ幅でうすーくえんぴつで線を引いて五線の外の音符も勉強できるようにしてます。(真ん中のドとか上のラね。)
そこに1円玉を乗っけて音符に見立てて使います。
あーちゃんが1円玉をランダムに置いたものを瑛海に読ませたり、逆にドレミの階名を言ってその音に一円玉を置かせるという練習もしています。
あ、ちなみにこの裏面は全く同じもので、へ音記号で五線を作ってあります。
◆リズムの練習◆
私の歌のレッスンは若い子だけではなく、60歳以上の方をかなり教えています。
コーラスで150人くらい、個人レッスンでも6人とか。
その方たちが共通して苦手なのが「リズム」です。
最近の曲の複雑なリズムが難しくてなかなかとれないというだけではなく(←レリゴで地獄を見た)、簡単なものでも手拍子で4拍たたきながら歌うと手を一定の速度で打つことができない方がとても多いのです。
歌として拍子がズレないレベルならあまり追及しないことも多いですが、リズム感がきちっとしている方が歌にメリハリが出るので、気になる箇所はリズム練習をとりいれています。
ピアノの場合は右手と左手が違う動きをするので、歌よりもずっと深刻。
前提となる拍子感覚がないと音楽が成立しません。
リズム稽古は音符を読むのと同時に進めて体に叩き込む必要があります。
まずあーちゃんが最初にやったのはリピート練習。
あーちゃんが手でたたいた1小節分(4拍分)のリズムをリピートして叩かせる練習です。
実際の動画がこちら↓
リズム稽古。
木村 聡子さんの投稿 2015年10月21日
付点のリズムで失敗してねこちゃんになるところが可愛すぎて我が家で大人気の動画です。親ばかゴメソ。
この練習がある程度スムーズできるようになったらいよいよリズム譜を読む練習です。
だいたい3か月目に入る少し前くらいから使い始めたのがこの本。
この本には音の高さのない楽譜がたくさん収録されています。
最初は手拍子でその譜面を演奏します。
口で「たん・たん・た~あん・たたたん・たん・うん」のようにリズムを認識させる方法をこの本では採用していますが、本当におすすめ。
(4分音符:たん 8分音符:たた 2分音符:た~あん)
これは、本に入る前のリピート練習から覚えさせておくとスムーズです。上の動画でもそうやっています。
いまは2冊目に入りました。
右手と左手をバラバラに別のリズムをとります。
こんな感じのリズム譜を一日に何個も練習します。
ピアノは右手と左手が違う旋律を弾きますので、とても良い練習です。
実際の動画です。(上のリズム譜とは別のリズムです。)
◆聴音◆
歌ったりピアノを弾くという行為をアウトプットだとすると、音を聴いて認識できるというのはインプットです。(読譜もですね)
インプットなしにアウトプットはありえません。
譜面の白黒文字から指に直結するのではなく、あたまの中で一度音となったものを指に伝えられるようになるためにも聴音は必須。
まずは1小節(4拍分)の短い旋律を弾いて、それをリピートで瑛海に歌わせます。
リズム稽古でも同じことをやりましたね。
ある程度弾く練習も進んできた時期になったら歌ではなくリピートで弾かせる方法も導入します。
これをだんだん長くしていって4小節くらいまでは覚えるように頑張りましょう。
紹介するのは私の子どもの頃にも使ってた歴史ある教材。
実は新しく買わずに、私の本をそのまま瑛海が使っています。
この中のフレーズを使って聴音の練習をしています。
将来的には聞きながら譜面に書き起こさせるようになるといいな。
(ちなみに私それすごい得意だった。大学受験も聴音は楽勝でした)
ちなみにこれは本来ソルフェージュ(楽譜をその場で読む。新曲視唱といいます)の教則本です。
この中の簡単なフレーズを聴音にも使うという方法をとっています。短いフレーズでもその場で作曲するのはめんどくさいですからね。
かなり万能な本ですが、一般の3歳児には難しいかもしれません。
時期を見ながらゆっくり導入を検討してください。
◆絶対音感◆
もうね、絶対音感はないよりある方がいいわけ。それはもう確実に。
ご存じだとは思いますが、絶対音感とはヒントなしで聞いた音がドなのかレなのかファ♯なのかを正確に認識できる能力。
対して、相対音感とははじめに基準音を「これがドの音だよ」と聞かせてもらってからならば、そこからの相対位置で「ラだな」とわかる能力ね。
私は中学生くらいまで完璧な絶対音感がありましたが、クラリネットとチェンバロという移調楽器をやったせいで絶対音感が狂い、今では下方向に半音ずれてしまいました。
(※移調楽器:クラリネットだとドの音を吹くとピアノでいうシ♭が出る。吹奏楽だとC管のフルートとB♭管のクラリネットは紙面上は違うキーの譜面を吹くが出る音は同じ。不思議だよね~。)
おかげで現在、レコーディングのように譜面を見て歌う場面では楽譜をひとつずらしながら読むということをしないとならなくなってしまってプチストレス。
私のような残念な人間はちょっと特殊ですが、絶対音感がきっちりある人間は原理的に相対音感もあるということですから、あらゆる場面で音楽の理解度が早く譜読みがとてもラクだしスピードも早くなります。特に歌の場合なんかはすごく影響があります。
そういうわけで、あーちゃんは私と弟を育てたときよりも早期に絶対音感を身につけるための練習を意識的に行ったと言ってました。
教える方は意識的ですが、教わる方は無意識なのが重要で、余計なこと考えない方が絶対音感は身に付きやすいのかも。
さて。あーちゃんが実際にやったこと。
1.
子どもがすでに知っている童謡(チューリップとか)をドレミの階名で歌わせる練習。
チューリップなら「ドレミ・ドレミ・ソミレドレミレ・ドレミ・ドレミ・ソミレドレミド・ソソミソラララソ・ミミレレドー」となります。
理屈は関係ありません。
ある高さの音は常にドである・レであるという法則性を耳と口で覚えさせます。
知っている童謡すべてでこの練習をやらせるくらいの勢いで歌わせれば、知らぬ間に絶対音感が付き始めます。
そういえば私も子どものころはピアノの音を高さで判断しているという感覚ではなく、ピアノが「ソ」と口で言葉を発音しているように聞こえていました。
(いまは半音ずれたのでそこらへんはモヤっと聞こえます。残念すぎる。)
2.
もう1台のキーボードで弾いた音を聞かせ、同じ音を弾かせるゲーム。
(2台のキーボードがなければ1台を交代で使います)
こんな感じ。
絶対音感をつける聴音練習。オクターブもわかってきました。
木村 聡子さんの投稿 2016年3月30日
この練習ではドレミを口で言わせるだけではなく鍵盤で実際に弾かせるのがポイントです。
なぜなら小さな子どもが出せる音域はせいぜい1オクターブくらいしかないからです。
真ん中のドとオクターブ上のド・オクターブ下のドは全部違う高さの音だと認識させて広い音域を覚えさせます。
耳の能力も個人差があるとは思いますが、個人差に関わらず、絶対音に関しては教えるのは早いほどいいという気がします。
というわけで今回はこのへんで。
なぜ基礎練習が大事かということや、各項目の内容も説明したので長文になりましたが、ぜひ実践してみてください。
次回は最終回です。
日々の練習を楽しくするコツや、ちょっとした便利グッズなどの紹介をします。
それではまた次回!
最終回はこちらです。
コメント
「あ〜うちと似たようなことしてるなぁ」が感想です。リズムの本2は大変勉強になりますね。もうマスターしちゃいましたけど、この本で、両手奏にスムーズにはいることができました。
今、娘は2歳10ヶ月です。ピアノの個人レッスンを始めてもうすぐ7ヶ月、だんだん様になってきました。お互い楽しみですね。頑張ってくださいね。
2歳になった息子に3歳になってらピアノを習わせたいと思っていたので、拝読させていただきました。とても参考になる貴重な情報ばかりで目からウロコでした。
ピアノの前段階としてリズムから教えていくことが大事なのですね。ありがとうございます。
さちさま
ありがとうございます。
音楽教育も色々な手法がありますので、これが絶対の正解というわけじゃないですが、お子さんに合った方法があればぜひマネッコしてみてください!
リズムは子供も大人も音楽でもっとも難しいところだと思うので、小さな頃から妥協せずに粘り強く練習することが大切だと思います!頑張りましょう♪
こちらの記事を拝読して、どうして自分が小学生の時にピアノレッスンに挫折したのかがよくわかりました。リズムを鍛える練習なんて全然していませんでした。
子ども用の楽典のようなテキストに鉛筆で記入させられるばかりで、実際にリズムを叩くレッスンはなかったから、まったく身に付きませんでしたし、先生のお手本を聞いてリズムや音を覚えないと弾けませんでした。
リズムの本、楽しそうですね。三歳になった娘と一緒にやってみようと思います。
とても参考になる記事をありがとうございます。