STORY
レシオ3
その頃、国の中は騒然としていた。
魔物に記憶を奪われたことを、
私と同じように多くの者が思い出したのだ。
私は城にいる全ての兵を集め、その先頭に立ち、魔物の森を目指した。
魔力など欲しくは無い。そんなものはどうでもいい。
兄を殺し、我々人間を欺いてきた魔物の存在を許すわけにはいかない。
そして、この戦を終えたら、
シルフィナを迎えに行こう。
愛しいシルフィナ…早く君に会いたい。
そして謝らなくては。
森の奥深くに、村はあった。
我々が攻め入ると、魔物たちはあの男と同じように呪文を唱え、抵抗しようとした。
しかし、軍勢の勢力は魔物を圧倒した。
「一人残らず皆殺しにするのだ!絶対に生かしてはおくな!」
僕は一番奥の建物の扉を開け、そこにいる年老いた魔物を斬り、
隣にいた女に斬りかかった。
ところがそれは…シルフィナだった。
僕は彼女に気付いた。気付いたはずなのに――。
シルフィナを刺していた。
涙が頬をつたう。
君はなんて残酷なんだ。
精霊でも、魔物でも、そんなことは関係ない。
君の命だけは守りたかった。
シルフィナの声が蘇る。
「私を殺しなさい」
愛する君を殺せるわけがない。
なのに…あの瞬間に、僕から記憶を奪うなんて。
君の死によって、再び君の記憶を取り戻すなんて。
僕は動かなくなったシルフィナを抱きしめ、声を上げて、泣いた。
君と過ごしたあの小屋に行くよ。
思い出す君の顔が、最後の泣き顔ではなく、
あの日の優しい笑顔であるように。
シルフィナ、君に会えてよかった。
END