STORY
レシオ2
彼女は森の中の小さな小屋に僕を連れて行き、看病をしてくれた。
牢獄の中でもがき、夢中で逃げ出したせいで、僕の身体はいつの間にか傷だらけになっていた。
彼女はシルフィナと名乗った。
名前以外は何も知らない。
でもそんなことはどうでもよかった。
僕だって殺人者かもしれない のだから…。
シルフィナは、僕の傷を看るために、毎日小屋にやってきてくれた。
最初は口を閉ざし、僕を恐がっているように見えた。
でも、日が経つにつれ、
シルフィナは少しずつ笑顔を見せるようになった。
美しく、優しいシルフィナ。
僕は彼女がやってくるのを楽しみに待つようになった。
彼女と過ごす、穏やかで幸せな時間…。
こんな生活がいつまでも続けばいい。
城のことは全て忘れてしまえばいい。
そう思った。
「君とずっと一緒にいたい」
傷が治る頃、僕は彼女に告げた。
シルフィナは嬉しいような困ったような顔をした。
「明日、また来るわ」
そう微笑んで、彼女は今日も去っていった。
すると、小屋の扉をノックする音がした。
「シルフィナ?」
扉を開けると、見知らぬ男が立っていた。
どうやら城の追っ手ではない。
男は言った。
「忘れるのだ。人間に精霊の存在を知られることは許されぬ。」
…この男は何を言っている?人間?精霊?
すると男は呪文のような不思議な言葉を唱えた――。
僕は、頭が混乱していた。
森をふらふらと歩いているところを、城の兵に見つかり、 再び捕らえられた。
牢獄で3日目のことだった。
突然、僕は身体中に電流が走ったような衝撃を感じた。
頭の中を記憶が駆け巡る。
兄さんが目の前で殺された時の事。
古びた小屋で微笑むシルフィナの姿。
僕の前に現れた男…そう、あの男に会うのは2度目だ。
兄さんの命を奪い、小屋に現れて僕からまたも記憶を奪ったあいつは…魔物だったのだ。
今、全てが繋がった。
「ここから出せ!魔物だ。魔物の仕業だ!」
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