17歳で突然、歌手になりたくなったなら【第3回】

microphone

前回と前々回はながーい前置き記事を書きました。
全部読みました?
だらだらした文章ですが、すごく大事なことを書いていますので、ちゃんと読んで下さいね。
今回から少しずつ具体的なことを書きますけど、今までの前提を読んでないと意味がない場合もありますので、必ず読んでね。→ 【第1回】 【第2回】

で、どう?
歌手なんか目指すもんじゃないっしょ。
さっさと受験勉強しろや、ゴルァ。

えー、あんだけ忠告したのにまだミュージシャン目指すとか言っちゃってんの?
正気ですか?
ふーん、そう。じゃあ勝手にどうぞ。
私は忠告したからね、どんな人生になっても人のせいにだけはすんじゃねぇぞ。っと。

さてと。
じゃあまずは一歩を踏み出しましょうか。
本格開始の今回は音楽をやるにあたって、まず頭にたたき込んでおいて欲しい根本的なことを語りたいと思います。

木村聡子PR
木村はオタクですが本業はプロの歌手・声優です。(ProfileVocal
主な出演作:ディズニー「魔法にかけられて」ジゼル(主役)・「アナと雪の女王」
「美女と野獣2017」・「名探偵コナン~戦慄の楽譜~」千草らら役歌唱 など。
メインのSNSはFacebookで、twitterに転送してます。
Instagram(親バカ写真)もちょこっとやってます。
Welcome Symphony
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◆音楽は言語だ◆

常々わたしが思っていたことなのですが、音楽を勉強するのに他の習い事にたとえると一番近いものは「外国語」です。
音楽には独特のルールがあります。
それは「文法」や「言い回し」と置き換えることができます。

ちょっと例を出してみようかな。

なにかの物語のあらすじをざっと説明するとして。
途中までは同じ展開だが、後半大きく変わるふたつのパターンがあったとします。
ひとつはハッピーエンド、ひとつは悲劇。

この2パターンのあらすじを説明しようとして、途中までの同じストーリー展開のところまで話したとしますね。
でも、たぶんその先を聞く前に、ハッピーエンドに向かうか悲劇になるかってなんとなーく先が読めたりしませんか?
そのあとに「突然のチャンスが・・」と来るか「幸福は長くは続かなかった」と来るか、なんとなくね。そこまでの言葉のチョイスや言い方のニュアンスとかで。
あと、スポーツニュースでも試合の途中経過までで、あ、これは負けたな、とか勝ったなとかなんかわかる。

ところがけっこう日本語のできる外国人でも、この微妙な違いは嗅ぎ分ける人は少ない。
最後の結果まで説明を聞かないと、先読みまでできるレベルのひとはなかなかいないんじゃないかな。

それがネイティブと非ネイティブの違いです。

音楽も同じで、微妙な表現方法の違いによりその先の展開が変わることがよくあるのですが、子どもの頃から音楽を勉強している、いわば「音楽ネイティブ」と大きくなってからめざし始めた「非ネイティブ」では、その違いを嗅ぎ分ける能力に圧倒的な差があります。

ネイティブの実例として、私の2歳になった娘の話だけど。

歌や音楽を「教える」ということは全然やってません。
だた子育ての一環として楽しく一緒に歌うだけ。しかし量が多い。
コンサート前に稽古を抱っこされて聞いてたり、保育園の行き帰りの自転車で一緒に歌を歌ったりという毎日のちょっとした音楽の積み重ねはおそらく普通の家庭の10倍以上かも。

私は幼児教育の専門家じゃないので、ちゃんとした比較はできませんが、おそらく2歳になったばかりの子としては破格にリズムや音程がとれている歌を歌います。
このドラえもんの歌を聴いてくれるかな?


ね、うちの子カワイイでしょう?

・・・・違う違う、そうじゃない。@鈴木雅之
いや、もうチョーー可愛いんだけどその話じゃない。

聞くべきはリズム感。
裏拍や符点やシンコペーションなどのリズムがごく自然にとれてるの。(カウントはだいぶ甘いけどね)
たった2歳なのに。正直わたしが驚いた。
「音楽は言語だ」と私が考えている証拠といってもいい。

娘がごく自然に歌えているこのリズムですが、還暦以上くらいの方、それも大人になってから歌を習い始めたひとの8割以上の生徒さんがものっすご~く苦労するリズムなんです。
それはね、大人になって感覚や記憶が鈍くなったからじゃないんですよ。
彼らの子どもの頃に聞いていた音楽にこういうリズムがあまり出てこなかったからです。
彼らにとっては外国語なんですよ。こういうリズムの音楽が。

リズムだけではなく、音楽には表現やテクニックなどにも一定の「パターン」があるのですが、そのパターンが体にしみこんでないと実際に歌う際に自然に使えない。
パターンは言葉で言えば「文法」にあたります。
みなさんが日本語でおしゃべりするときに文法を間違えないように意識しながら話すなんてことはありえないと思います。同様に音楽ネイティブはリズムや表現は本能的に内からわき出てくるので、頭で考えるという次元で演奏していないのです。

リズムくらいならテレビから流れる音楽を自然に聴いて、たまにカラオケ行くくらいの一般人でも身についてる人もたくんさんいますが、これが表現力やテクニックになるとそうは行きません。
幼少期からたくさんの音楽に触れて、実際に奏でる(歌う)ことをたくさんやってきたネイティブに、17歳で突然音楽を目指し始めた非ネイティブがなかなか追いつけないのはある意味当然。

なんども言うけど、音楽は言葉だから。

帰国子女がしゃべるペラペラな外国語に、高校生から勉強した人間がかなわないのと全く一緒。
(歌に歌詞があるというのはここでは無関係。音楽そのものが言語という意味です。)

音楽ネイティブは日本語と同じように音楽言語を普通に会話するように使いこなすのに対して、非ネイティブは外国語をカタコトで話すがごとく音楽を奏でるので、あらゆる意味でスムーズにいかず、音楽的な意味での”てにをは”を間違って使っているという現象がしばしば起こります。

そしてそれは本人には気づかないレベルで起こるので、なかなか直すことができないわけです。スポーツのように視覚的に確認できる現象もないから何が悪いかわからない。

だからそれを指摘してもらう「レッスン」が必要になります。
私が大学卒業後にレッスンを受けないでも上達することができたのは、そこまでの積み重ねですでに音楽ネイティブであったからと考えられます。自分で自分のダメなところがすぐにわかったので、自分だけの力で直すことができたからね。
クラシックからミュージカル・ポップスというジャンルの壁は多少ありましたが、方言程度の差なので完全な外国語を勉強することを考えると遙かに低く薄い壁でした。

あなたが何の経験もなしに、17歳の今から歌手になりたいと思うとしたら。
それは今から帰国子女と同レベルに外国語ペラペラになるのと同じくらいの難易度なんだよ、ということ、理解できました?

うへぁ、無理!
と思う?

そう思うなら諦めたらいいと思うよ。
その時点でもう無理だからね。

それでもやりたい!どうしたらいい?
と思う人は次へ。

(ちょっとだけ救いを。外国語の場合は全くゼロから始めるというイメージですが、音楽の場合はいまの時代はテレビ等で自然にかなりの量を聞いているので、実際は外国語よりは少しラクなんじゃないかと思います。)

◆1万時間の法則◆

あらゆる技術を習得するのにかかる時間はおおむね1万時間だという定説があります。
何を習得するのかにもよりますし、個人的な能力の差もあるでしょうが、ひとつの目安として説得力のある数字とされています。

さきほどの言語でたとえると、幼児が一日に自国語に接する時間を10時間と設定すると2.7年。
1歳半からしゃべり始めて4歳頃。
10時間みっちりその言語だけのことを勉強しているわけじゃないから密度1/3として計算するとだいたい10歳。かなり納得な数字じゃない?

さて、あなたが17歳から歌を始めて、いっぱしに歌えるようになるまでにかかる時間。
1日3時間で9年。
1日4時間で7年。
1日5時間で5年半。

けっこうかかるね。
でも逆に言えば、必ず毎日これだけの時間をかければ、モノになる可能性はぐんとあがるってこと。

連材第1回の記事で、なぜわたしの経歴をあれだけ詳しく書いたかというとね。
歌を始める15歳までにかけた音楽の時間のイメージを持って欲しかったから。
17歳でゼロからスタートのひとと、同じ17歳でもすでにピアノ等で音楽経験が5000時間(しかもスポンジな幼少期の!)で、どれだけ差があるかに目をそらさず、しっかりと危機感をもつべき。
だけど、その差は大きくても数字として表せる限り、物理的に絶対に不可能ってわけじゃない。
その5000時間の差を実際にたくさん勉強することでどんどん縮めればいいんだよ。

それにね、全くの未経験かと思いきや、親が音楽好きで常に音楽が家の中に流れているような家庭環境だったり、学校の音楽の授業を真剣取り組んでいたり、CDをたくさん聞いてたり、すごくカラオケが好きで、もともとセンスがよくて物まねが上手だったりするような子は、その時点で2000時間の経験値を持っているという可能性もあるよ。
専門的な教育を受けた時間だけを換算するわけじゃなくて、音楽に集中して触れている時間がどのくらいあったかで考えて。

そして今後重要なのは同じ1時間でもそれ以上の効果のある練習の仕方を見つけることだね。
とにかく17歳は若いようでいて、芸事の世界ではもう全然若くない。
趣味ならいいけど、プロになるならちょっと遅いと思った方がいい。
それを自覚して、なおかつあせらずにじっくり時間をかける覚悟を持ちましょう。

1日は24時間。1年は365日。
これは大統領でもサラリーマンでも女子高生でも赤ちゃんでも全員平等にそれしか与えられてません。
あなたがライバルとの5000時間の差を埋めたいと思うならば、5000時間分なにかを我慢しなくてはならないことは、わかるよね?
友達とファミレスでおしゃべりする時間、テレビでバラエティを見る時間、LINEやmixiやFacebookをする時間。(私が勉強してたころにFBなくて助かったわ・・・)
飲み会、女子会、恋人と過ごす時間、休日に遊園地に行く時間。
そういうものを欲望のままに楽しんでしまったら、当然の結果としてその5000時間はいつまで経っても追いつかないまま30歳の日を迎えることになりますよ。ああこわ。

でもね。

その我慢をした先の成功は約束されたものじゃないんだよね。
本当に自分が目指すものが、多くを我慢するだけの価値があるのかは、良く考えた方がいいよ。
何度も言うけども私はあなたが歌手を目指すこと自体を全然おすすめしてないからね。

さあ、どんどん絶望的な内容になっていったね。
どーんと落ち込んだところでお知らせです。

今回はここで終了でっす。
おばちゃんモニターの見過ぎで目が疲れちゃったの。
それではまた次回~、サヨーナラー!!

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